コラム / アドバイス

    アウトドアの体験とアイテムは、防災にも活きる。〜災害危機管理アドバイザー・和田隆昌さんが語るその理由とは?〜

    ゲストライター
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    防災士の資格を持ち、その道のスペシャリストとしてTV番組や講演などを通じて防災の大切さを世の中に広めている“災害危機管理アドバイザー”の和田隆昌さんは、これまでにスケートボードやサーフィン、ヨットにカヌー、スノーボードから登山まで、あらゆるアウトドアスポーツを経験。自然のリスクと向き合うなかで、危機管理の大切さに目覚めたといいます。「アウトドアでの経験やアイテムは、被災時にも多いに役立つ」と話す和田さんに、アウトドアと防災の密接な関係性について教えてもらいました。

     

    日本人は防災への関心が薄い!?
    まずは“自分と自然はつながっている”という意識を持つことから。

    地震、台風、洪水など、近年の日本における自然災害は、その種類も被害の大きさもどんどん増していると感じる人も多いのではないでしょうか。日本は世界でも有数の自然災害多発地域であり、そのリスク(被害)も世界最大級だといいます。

    「近いうちに起こると予想されている南海トラフ地震や首都直下型地震への警戒、それに伴う津波、さらに近年は気候変動により水害も増えています。日本人はさまざまな災害を経験してきたわけですから、防災意識が高くてもいいはず。ところが、災害を忘れやすい体質を持っているとも言われてしまうほど、実は防災への関心が薄い国民性でもあるんです」

    長年、多くのアウトドアスポーツに携わりながらも、過去に雑誌記者として伊豆大島の噴火を目の当たりにし、阪神淡路大震災の被災地でボランティア活動を行ってきた和田さん。海や山のスポーツにおける知識やノウハウを災害対策として世の中に広めたいと考えるようになり、2004年から本格的に災害危機管理アドバイザーとしての活動をスタート。そんな和田さんにまず伺ったのは、災害から身を守るために必要な心構えについて。

    「日頃から自分が住む地域、自宅にどのようなリスクがあるかを正確に把握し、関心を持っておくことが必要です。例えば都市部でも油断はできません。整備されていて見えないだけで、かつては小さな川が無数に走っていた場所も多く、そういった場所は大雨の際のリスクは高くなります。どこにいても“自然と繋がっている”という意識を持っておきましょう」

     

    アウトドアの経験値とギアは
    そのまま防災にも応用できる

    都市で暮らす中ではあまり意識する機会のない“自然”。そんな意識を根本から変えてくれるのが、アウトドアでの体験です。その効果を端的に言えば“観察眼が磨かれる”ことなのだそうです。

    「分かりやすい例が登山です。山では自分の周囲の情報から、常に現在位置を立体的に把握するスキルが求められますが、そこで欠かせない指標が『標高』や『海抜』です。また、周囲の地形からも『土砂崩れ』などの危険を察知し、『より安全な方向』を見極めることができるようにもなります。それによって、自宅まわりの地形から安全な場所を探し出したり、そもそも危ない土地に住まないという判断をしたりすることに繋がるわけです。他にも足場の悪い場所の歩き方や、火起こしの方法など、災害時に役立つスキルを挙げたら尽きません」

    また、登山やキャンプで使うギアも災害時には心強い存在になると、和田さんは続けます。

    「最近は1人で楽しむソロキャンプがブームで、寝具から調理器具まで一式揃えているという人も増えました。とても良いことだと思います。例えば防災袋を備えようというとき、滅多に起きないことのためにお金を掛けられる人ってそんなに多くないじゃないですか。でも、自分が普段から使いたいとか、キャンプで使いたい趣味のものであれば、選ぶのも楽しいですよね。そこに信頼できるギアがあれば、わざわざ防災に特化したものを買う必要はないんです」

    和田さんが愛用する「防災にも役立つアウトドアギア」について訪ねてみると、実にリアルな答えが返ってきました。そのいくつかをご紹介しましょう。

    まず、ご飯を炊いたりパスタを茹でたり、おかずを作ったり。1つでさまざまな調理が可能なメスティン。和田さんは普段、その中に固形燃料とストーブ(燃料を燃やす台)を収納しています。

    「飯ごうでお米を炊く際は付きっきりで火加減を見なければなりませんが、これは簡単に放置していても炊けるので重宝しています」

    また、キャンプ場に泊まったり、日の出を狙ったナイトトレッキングをしたりしたことがある人なら、山の夜の暗さはご存じのはず。

    「明かりは心を落ち着かせるために欠かせないものなので、ヘッドランプをはじめ、ランタンなどは予備も兼ねて複数持ち歩いています。ソーラー充電ができるものは電池を切らす心配がないのでいいですね」

    山々を繋ぐ長い縦走の際に欠かせないのが、ポータブルタイプの浄水フィルター(下の写真:左)。 「ウイルスや動物のフンなどをろ過することで、都市に流れる川の水でも安全に飲めるようになります。1本で約400L浄水できるので、飲み水を大量に備蓄する代わりにもなりますね」

    ゴーグルも実は被災地では欠かせないアイテム(下の写真:右)。「被災地に行って分かるのが、粉塵がすごいということ。ゴーグルは欠かせないアイテムになっています」

    このようにひとつひとつのアイテムを見てみると、携帯性に優れ機能性も高いアウトドアの道具は、そもそも「何もない自然の中でどう生き抜くか」に着目して作られたものが多いことがわかります。つまり、自然災害のリスクに備えるという点では、アウトドアも防災も実は大差がなく、むしろ災害時にこそ本当の価値に気付くことができると言っても過言ではないのです。

     

    “自分の身を守るための道具”だからこそ
    過酷な環境に耐え、信頼できるアイテムを。

    災害時に役立つのは、アウトドアでのスキルや道具だけではありません。過酷な環境に耐えうるウェアも、自分の身を守るためのとても重要なアイテムです。そこで頼りになるのがGORE-TEX プロダクトだと和田さんは言います。

    「気温の変化に対応し、悪天候から守ってくれるアウターの防水性、防風性、透湿性は、アウトドアでの生命維持に欠かせない機能です。私もこれまで、海や山での活動時にGORE-TEXの製品を愛用していて、特に冬山登山の際にはその優れた防風性・透湿性に何度も助けられました。体温低下を防ぐためには、雨や汗で体を濡らすことは避けなければならないですし、そのためには風も遮る必要があります。それと似たような状況は、災害発生時にも十分起こりうるのです」

    少し大げさだと思われるかもしれませんが、被災地の過酷さを知れば知るほど、高機能ウェアが大いに役立つことがよく分かるはずです。

    「万が一、自宅が被災してしまったとして、避難所で快適に過ごせると思ったら大間違いです。特にコロナ禍になって以降、避難所の収容可能人数は限定的になりました。廊下で過ごしていてくださいとか、外で待っていてくださいとか、そんなことは当たり前で、かなり過酷な状況に陥る可能性が高いのです。そんなとき、 GORE-TEXのアウターは最後の砦。命を守るためだけでなく、心の安心のためにも備えておくべきなんです」

    またシューズを選ぶ上でも、GORE-TEX プロダクトのメリットを知っておきたいところ。

    「GORE-TEXを採用したシューズもあるといいですね。冬山もそうですが、極寒の中でのシューズ内の蒸れはそのまま凍ってしまう危険性があります。そのため、防水性だけでなく透湿性はかなり重要なポイントですね。浸水を防ぐためにはハイカットのものがよりよいですし、頑丈な登山靴タイプであれば、がれきやガラス、釘などが散乱していても安全に歩くことができます」

    「ウェアでもシューズでも、もちろんその他のギアでも、共通して言えるのは、自ら使ってみて信用できるものを揃えるべきということ。その点では、スポーツから被災地まで、あらゆるシーンでその性能の高さを証明してくれたGORE-TEX プロダクトには、大きな信頼を寄せています」

    日頃から防災について考え続けるのは難しいこと。だからこそ「まずは軽い気持ちからでもよいので、アウトドア活動での楽しさを災害対策に生かしてみてほしい」と和田さんは言います。“自然とつながっている”ことを意識しながらアウトドアを楽しむ。そのように少しだけ視点を変えてみるだけで、すでにあるスキルやギアも、きっとその多くを防災に生かせることでしょう。

    和田隆昌さん

    多様なスポーツ経験からアウトドア雑誌の編集者を歴任。「防災士」の資格取得をきっかけに、2004年から災害危機管理アドバイザーとしての活動を開始する。自治体や企業、団体等の災害対策コンテンツを作成、全国で講演活動を行うほか、メディアでは、市民が具体的に可能な災害対策をさまざまな形で指導。また、教育機関で使用可能な防災マニュアル、防災教育の教本等の作成にも携わる。

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