コラム / プロダクト

    【連載】進化した GORE-TEX PRO がもたらしたもの。 パタゴニア「プルマ・ジャケット」を より理想に近づけるために

    ゲストライター
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    2020年、ネクストレベルへと進化を遂げた「GORE-TEX PRO プロダクト」。“極限を征する”ために開発されたこの素材は、より高度な「頑丈さ」「透湿性」「ストレッチ性」、さらには「サステナビリティ」を実現。新たに生まれ変わった「GORE-TEX PRO プロダクト テクノロジー」が採用されたアイテムは、アウトドア体験にどのような革新をもたらすのでしょうか。この連載では、ものづくりへの徹底したこだわりを持つアウトドアブランドの担当者にインタビュー。新しい「プルマ・ジャケット」、そして新しい「GORE-TEX PRO プロダクト」の魅力に迫ります。第4回はパタゴニア マーチャンダイザーの片桐星彦さん。地球問題の解決を企業理念に掲げるパタゴニアにとって、ウェアに使用する素材の環境負荷軽減と性能の両立は最重要課題。そんな同社が認めた GORE-TEX PRO プロダクトのサステナビリティとは。

     

    機能が優れているだけではなく、
    地球環境に対して姿勢を示す旗艦モデル

    「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」ことを企業理念に掲げるパタゴニアは、環境保全に対する強い信念を持つ企業としても知られています。使用する素材に対して独自の基準を設けており、どんなに高機能であっても、高いサステナビリティを実現していなければ製品に採用されることはありません。冬山向けのハードシェルジャケット「プルマ・ジャケット」は、そんな同社の理念がよく反映された一着です。

    「現在のプロダクトラインにおける最高峰に位置するプルマ・ジャケットは、耐久性や防水透湿性といった基本的な機能に加え、コンパクトにパッキングできる携帯性の良さや軽さなどをバランス良く備えているのが特徴です。アルパインクライミングなど、失敗の許されない究極状況での着用を想定し、徹底的に無駄を削ぎ落としたことで生まれた、シンプルでクリーンなアイテムだといえます」

    機能性に関しても、必要最小限のディテールで求められる機能をフルに満たしています。例えば、立体裁断によるシーム(縫い目)部分には、細いシームテープを使うことで折り畳んだときの嵩張りを最小限にしつつ、軽さも追求。

    また、裾やフードなど、登山の最中にフィット感を頻繁に調節する部分には、片手で手軽に操作できるコヒーシブシステムを採用。これらは、プロのフィールドテストの結果も踏まえ、取捨選択された中で厳選された機能だといいます。

    「この一着で幅広いシーンをカバーできますので、アルパインクライミングだけではなく、バックカントリースキーやスノーボードなど、冒険性の高い活動に幅広くお使いいただけます」

    さらに2020年秋冬シーズンの新作では、プルマ・ジャケットに新しい“GORE-TEX PRO プロダクト”を採用。最高レベルの機能性を有しているだけでなく、サステナビリティが向上していることが採用の決定打になりました。

    「“GORE-TEX PRO ファブリクス”は表生地にリサイクルナイロンやバッカー(裏地)にソリューション・ダイ(原料を先染めする染色技術。使用する水の削減につながる)を取り入れたことで、最高峰の機能を有しながらも環境性能も高い、希有な素材となりました。これは、『最高のテクニカル製品を作る』『環境への不必要な悪影響を最小限に抑える』という、パタゴニアが初期から掲げるふたつの目標と合致するものです。どちらも妥協できない我々にとっては、プルマ・ジャケットに“GORE-TEX PRO プロダクト”を採用したことで、大きな一歩を踏み出すことができました」

     

    パタゴニアの素材に対するこだわりが
    GORE-TEX PRO プロダクトの開発に寄与

    パタゴニアは素材の選定に対し、並々ならぬこだわりを持っています。今回、新しい“GORE-TEX PRO プロダクト”の採用が決まるまでにも、実は紆余曲折があったと片桐さんは言います。

    「弊社ではすべての製品を自社のラボで素材からテストし、フィールドテストとフィードバックを繰り返しながら開発を行っています。特に生地については、環境性能や機能が『自分たちの求める水準に達しているか』、達していないならば『何が原因で、どうすれば改善できるのか』というところまで掘り下げながら慎重に検討しています」

    どの生地を採用するかを決定するのは、パタゴニアのラボで働くマテリアルチーム。生地メーカー側が公開している数値が正しいのか、パタゴニアの製品に使う場合の親和性はどうかなど、さまざまな観点から総合的に判断するのだといいます。

    「各生地メーカーは、もちろん業界で定められた水準以上のものを作っていますが、その開発や試験の環境は会社によって異なります。そこでパタゴニアでは、一律の条件下でテストをし、正しく判断するためにラボを設けているんです。私も実際に本国のラボを訪れた事がありますが、マテリアルチームは専門の学位を持った技術者で構成されていて、ここまでやるかと、その徹底ぶりには驚かされました」

    そうした中で出てきた改善策はパタゴニア内部に留めておくことはせず、生地メーカーへ具体案としてフィードバック。“GORE-TEX PRO プロダクト”が開発される以前からパタゴニアはゴア社に対してサステナビリティの向上を要望しており、そのやり取りの中で得られた知見が、実は“GORE-TEX PRO プロダクト”に反映されているのです。

     

    リスクを負ってもやる意味がある。
    信念を共有するパートナーとして

    機能性とサステナビリティの両立という、一見して相反するように思えるパタゴニアのチャレンジ。その茨の道を歩むには、同じ熱量でサポートしてくれる存在が不可欠です。新しいプルマ・ジャケットを誕生させたパタゴニアとゴア社の間には、信頼し合える深いパートナーシップが築かれています。

    「年々環境規制も強まるなか、機能性とサステナビリティをどうバランスを取るかは非常に悩ましい部分です。例えば今回の"GORE-TEX PRO プロダクト"の進化の要でもあるソリューション・ダイですが、実は、ビジネス観点ではとても扱いづらい素材でもあるんです。というのも、生地を原料の段階で染めるため、発注があってから生産するのでは既存の流通サイクルに間に合わず、発注が入る前の見込みの販売数で生産しなければならず、在庫を抱えるリスクが発生しまう。ビジネスとしての判断がとても難しくなるわけです」

    しかし、いかに困難であっても、そこにコミットして何としてもやり切るのがパタゴニアの姿勢。

    「リスクを最小限にするビジネスモデルを作っていくことも、責任のひとつであると考えています。そのためソリューション・ダイの生地は、ひとつのモデルだけではなく、次のシーズンのモデルにも利用する計画を立てることで、在庫リスクを軽減することができました」

    それは“GORE-TEX PRO ファブリクス”が今後も長く使われていく素材であると確信しているからこその決断でもあります。

    「パタゴニアという企業は少々のリスクは承知の上でも、地球環境を知恵で乗り切るという社風。リサイクルナイロンとソリューション・ダイは、環境へのインパクトを大きく減らせる素晴らしい技術ですが、今後、もっともっと良くしていくことができる余地は残されていると考えます。しかし、こればかりはパタゴニアだけの努力でどうにかできるものではありません。こらからもゴア社の力を借りながら、ともに課題をひとつずつ解決していくことが、より良い未来に繋がっていくことであると信じています」

     

    プルマ・ジャケット(Patagonia 公式サイト)

    https://www.patagonia.jp/mens-pluma-jacket/83755.html?dwvar_83755_color=ANDB

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