限界に挑む挑戦者に寄り添うGORE-TEX プロダクトテクノロジーは、パートナーブランドにより、子供たちのためのプロダクトにも積極的に用いられています。なぜ、高性能な「GORE-TEX ファブリクス」が選ばれるのか。そして、各社が子供たちに向けたアクションに取り組む意義とは。
今回ご紹介するのは、東京2020オリンピック・パラリンピックにおいてゴールドパートナーを務めるなど、日本を代表するスポーツ用品メーカーのひとつであるアシックス。なかでもシューズは創業から変わらぬ同社の旗艦事業で、世界の人々の生活を足元から支えています。子供靴においての研究開発も長年の実績があり、「スクスク」シリーズはその誕生から今に至るまで25年もの間ずっと成長を続けています。今回は、アシックス ライフスタイルウォーキング開発チームの安井壮さん、アシックスキッズ銀座・店長の水野ますみさんの両名に、開発と販売の双方の視点から見たアシックスの子供向けシューズ、及びGORE-TEX プロダクトテクノロジーとのシナジーついてお話をうかがいました。
創業から変わらぬ想いを受け継ぎながら、
時代に則したものづくりをする。
アスリート向けフットウエア、アパレルさらにはウォーキングシューズやライフスタイル向け商品など、多くのカテゴリーでさまざまなユーザーに向けた商品展開をしているアシックス。そのベースにはユーザーの健康を支えるという基本的な考えがあり、今後はより日常生活に寄り添ったラインナップを強化していくそうです。まずは商品開発に携わる安井さんに、同社のポリシーをうかがいました。
「私たちが将来ありたい姿を長期的な視点で表した方針『VISION2030』において、『誰もが一生涯、運動・スポーツを通じて心も体も満たされるライフスタイルを創造する』という目標を掲げています。今まで当社はパフォーマンス・アスリートのためのビジネスに主眼を置いてきましたが、今後は老若男女、人種、障害の有無などを問わず、そして身体の健康管理だけではなく心の健康の管理や向上にも重きを置いて、事業ドメインの拡張に注力していく予定です」
ユーザーの健康を支えるというポリシーのもと、子供向けのシューズも確固たる信念を持って作られています。その一足一足には開発者の想いや、研究の末に誕生したテクノロジーが詰め込まれていると言います。
サイズが小さいから「子供向け」なのではない。
子供用シューズに込められたこだわり。
「スポーツを行うための基礎となる身体を作る上では、幼少期の生活環境や運動は大いに重要です。そのため私たちは常に『歩きやすさ、動きやすさ』にこだわって、歩き始めた赤ちゃんのためのファーストシューズから商品開発を行っています。開発の際は、プロアスリートの足の動きの研究も行なっているアシックススポーツ工学研究所で、子供の成長による足の動きの変化を調査。靴の構造、素材、デザインを研究して、常に研究結果を反映させています」
子供用シューズに採用する素材やデザインは、既存の大人向けモデルを参考にする場合もあるそうですが、基本的には「子供の足と大人の足は別物」という考え方で、商品企画は毎度ゼロからのスタート。子供専用の靴型を使用して、子供向けの工夫を取り入れているのだと言います。
「『スキャモンの発育曲線』というデータでは、6歳頃までがもっとも神経系が発達する時期だとされています。神経系の発達が著しいこの時期に、運動によって神経経路にさまざまな刺激を与えることは非常に大切なこと。そのため『足にいい靴=歩きやすくて動きやすい靴』だと考え、動きやすさに徹底的にこだわっています」
その開発の過程では実際に子供たちに履いてもらい、子供たちの足を計測して得た情報、さらには子供たちの声も反映されます。
「アシックスはシューズメーカーとして、適切な靴の選び方や使い方を知ってもらうべく、バスケットボール、サッカー、野球など、ジュニアスポーツのサポートを行っています。その際に足の計測会を開いたり、お客様と接する販売員さんやお客様相談室に寄せられた声を参考にしたりしながら、それらの情報を企画・開発に盛り込んでいます。直接、ターゲットとなるお客様にインタビューを実施することもあります」
用途やシーン別にシリーズ展開をしながら、
アップデートを重ねる。
アシックスでは大人用のシューズ同様、子供用においても目的や用途によって複数のシリーズを展開。スポーツをする子供たちを対象にした「アスレチックシリーズ」、ライフスタイルシリーズとして提案している「オニツカタイガー」や「スポーツスタイル」、そして、キッズオリジナルシリーズとして、幼児から小学生低学年までをターゲットにしている「スクスク」や高学年向けの「レーザービーム」などのシリーズをラインナップしています。
これらの中でも「スクスク」は歴史も長く、2022年で誕生から25周年に。このシリーズに深く関わる安井さんは、「スクスク」への想いを熱量たっぷりに語ってくれました。
「『子供の足の健康を守る』ことをコンセプトに生まれた『スクスク』は、お子様の足の構造や動きを研究し、それぞれの年齢ごとに歩きやすさ、動きやすさ、使いやすさにこだわって開発したコンフォートシリーズです。足のゆびをしっかり使って身体を思い切り動かすことが、子供たちの健やかな成長につながる。そう考えて『子供の足にいいシューズ』を目指して作られています。理想は、土の上を裸足の感覚で動けるシューズ。そこに一歩でも近付けるように、子供たちの足形・歩き方を徹底的に調査し、シューズ開発を続けています」
「足のゆびをのびのび動かせる扇形の靴型、前足部が足なりに曲がるソール、かかとを包み込む設計の中敷、消臭・抗菌機能のある素材を使用した中敷き選び……。これらはその一部ですが、どうすれば子供の足にやさしい靴になるのかを考え、さまざまな機能やデザインを取り入れています」
親子のお悩みを解決に導くための
キッズシューズ専門店も展開中。
アシックスでは子供の足に適した商品設計を行いつつ、キッズシューズ専門店を設け、ユーザーの要望に応えています。「アシックスキッズ銀座」の店長・水野さんもまた、子供用のシューズに関わっている一人。同社の取り組みについて、販売スタッフという立場からの話をうかがいました。
「アシックスでは『子供の健やかな成長を足元から応援する』をコンセプトとして、キッズシューズ専門店『アシックスキッズ』を都市圏(東京・大阪)で展開しています。歩き始めの幼児から小学6年生までのシューズを取り扱っており、アシックスが独自で開発した計測機器などを使いながら専門のスタッフがお子様の足や歩き方を測定。一緒に確認しながら、ひとりひとりの足に合ったシューズ選びのお手伝いしています」
子供向けの専門店ならではのサービスや、ユーザーにとってのメリットは、どういったところにあるのでしょう?
「靴選びで最も大事なのがフィッティングです。当店の強みは、足の長さや足幅を測ったサイズだけではなく、数値には見えてこないお子様の足ゆびの大きさや肉厚感もチェックさせていただき、成長著しいお子様それぞれに適した製品をご案内しています」
「また、履き心地の他に重要なことは、お子様自身がその靴を気に入ること。靴次第で行動やモチベーションが変わってきます。好奇心旺盛に歩き回る子供たちをアシストできるように豊富なラインナップを取り扱い、お気に入りの一足を選んでもらえるよう常に準備しています」
アウトドアも水たまりも何のその! 活発な子供の自主性を育てる
GORE-TEX プロダクトテクノロジー搭載モデル
「お客様にヒアリングをすると『雨の日でも履けるスニーカーはないか?』『濡れた靴を毎回乾かすのが大変…』といった、デザインや履き心地以外の機能を求められることも多く、そんな時にGORE-TEX搭載のシューズをご紹介すると『こんな便利なものがあるんですね』と喜んでいただくこともあります」と水野さん。
このような多様なニーズがある中、子供向けシューズにおいてGORE-TEX プロダクトテクノロジーはどのような役割を果たしているのか、再び安井さんにお話をうかがいました。
「『子供が長靴を履きたがらない』という親御さんからの声は多いですし、長靴を履くとどうしても歩き方も変わってしまうので、雨でも晴れでも履ける靴が子供には必要だ、という思いはから以前からありました」
そんな思いをカタチにするべく、子供向けシューズにGORE-TEX プロダクトテクノロジーを採用。小さなシューズでもしっかりと防水性、透湿性などの優れた機能を備えています。
「リリース当初は『雨などの水の浸入は抑えつつ、汗の水蒸気は放出する』というGORE-TEXの機能が販売員にあまり浸透していなかったため、勉強会などを積極的に行いました。その結果、機能がしっかりとお客様にも伝わり、実際にその機能を体感いただけたことで、リピート率も高まり、今では商品として定番化するに至りました」(安井さん)
「泊まりで出かけた時に靴が濡れてしまったら、次の日も濡れた靴を履かないといけません。でも、防水性に優れたGORE-TEXの靴であれば靴の中に水が浸み込まないので、行楽シーズンは店頭で前面に打ち出しています。そしてもちろん、梅雨の時期はご好評をいただいています。また、子供たちは汗かきなので、透湿性に優れたGORE-TEXのシューズは靴の中のムレが抑えられるというのもグッドポイントです」(水野さん)
履きやすさにこだわったモデルと、
今後のGORE-TEX ブランドとの取り組み
「スクスク」シリーズから発売されている「AC.RUNNERMINI G-TX 2」は、GORE-TEX プロダクトテクノロジーを搭載した子供向けのスニーカー。足が成長する中で正しい歩き方を身につけることが求められる、約3~7歳の児童向けに展開しているモデルです。
足の曲がる位置を考慮して設計した分割ソールは屈曲性に優れ、足の動きをしなやかにサポート。さらにソール中足部に樹脂製のパーツ「トラスティック」を搭載することで足のねじれを抑制し、歩行時の安定性を高めています。
また、GORE-TEX ファブリクスが足全体を覆うように配され、優れた防水性と透湿性を実現しています。
「2022年の春夏には、GORE-TEX モデルの新たなカラーをリリースする予定です。GORE-TEX搭載のモデルは、キッズでも今後さらに需要が高まると思います。今後も活用できる機会があれば積極的に取り入れ、より良い商品開発ができればと思っています」(安井さん)
安井壮さん
ライフスタイルウォーキング開発チーム所属。キッズシューズをはじめ、ビジネスシューズ、ウォーキングシューズといった、より日常シーンで使用するカテゴリーの製品の開発研究を担当。二児のパパとしての主観も交えながら、子供や大人の足元を支える製品を生み出しています。
水野ますみさん
銀座5丁目に店を構える子供靴の旗艦店「アシックスキッズ銀座」の店長。同店ではアシックスが独自に開発した足形計測システム「fdigi(エフデジ)」での足形計測サービスを行うなど、多角的な目線からユーザーに適した商品を提案。シューズを通じて、足元から健康をサポートしています。
▼ AC.RUNNERMINI G-TX 2
https://asics.tv/33D08zW
▼ アシックスキッズ フラッグシップストア
https://asics.tv/3Ja51ka