GORE‑TEX® プロダクトは認定工場でしか製造できない
「GUARANTEED TO KEEP YOU DRY™」と書かれた、黒いひし形のハングタグをご存知でしょうか?

優れた防水性・防風性・透湿性を誇る、GORE‑TEX® プロダクトが有効に使用できる状態であることを示す証書です。これはあなたをドライで快適に保ちますというGORE-TEX プロダクトブランドのブランドプロミスです。
最終製品の品質にまで責任をもつその背景には、ゴア社認定工場でなければGORE‑TEX®プロダクトを製造できないというルールがあります。
今回訪れたのは、国内有数の認定工場である岡山県の「イー・エム企画」。国内有数のブランドから厚い信頼を得ている同工場では、妥協なきものづくりをどのように実現しているのでしょうか。担当者の方にお話を聞きました。
新製品の生産は レインテストに合格してから始まる
岡山駅から瀬戸大橋線に乗車し約10分、のんびりとした住宅街を抜けた先にイー・エム企画はあります。ゴア社が日本に進出した当初から認定工場となり「メイド・イン・ジャパン」の高品質なものづくり を支えてきました。
「資料がなく、いつのタイミングで認定を受けたかわからないんです。でも、当時いただいたライセンスだけで現在も製造しているわけではありません。頻繁にレギュレーションは変わりますし、ファブリクスの種類が追加されたり、シームテープの幅が細いものが登場したり、キャップやハットを手がけるようになったりと、新しい規格を扱うたびに認定を受ける必要があります」
認定工場だからといって、すぐに大量生産できるわけではないのもポイントです。新しいデザインの製品を作る際は、まずサンプルをアジアの拠点である深圳(中国) にあるゴアのテストラボに送ります。そこで各種テストに合格し、認定証をもらって初めて生産がスタートするのです。

ゴアのラボにおけるレインテストの様子
「どのブランドさんもデザインを優先されるので、ここにステッチを入れると漏水の原因になるかな?と思っても、まずはテストに出してみます。そういう進め方なので、そこそこの割合で不合格になります(笑)」
さらにテストで指摘された箇所を修正すれば、必ず合格するわけではありません。すべての判断基準は、レインルームでの防水・透湿チェックに通るか否か。そこに一切の妥協はないのです。
「一着がすべてGORE‑TEX® ファブリクスで構成されているわけではありません。裏地に別素材が使われている製品などは、その生地が下から水を吸い上げてしまうこともあります」

漏水がないか、縫製およびシームシーリングを施した各種パーツを抜き打ちでテストしていく
こまかなレギュレーションに沿って大事に素材を扱う
ここからは、順を追って生産工程を見ていきましょう。
まずは、型紙を出力する場所です。
各ブランドから届いた型紙データを実寸で出力する際に、縫い代の幅、ステッチは何mmで入れるかなどの情報を盛り込みます。
型紙を出力したら生地を裁断します。各パーツをどのように配置すれば生地の無駄がないかはコンピュータが最適化、自動で裁断していきます。


CAMと呼ばれる自動裁断機。傷がつかないよう、原反を広げるときから裁断されたパーツを取り出すときまで丁寧に扱っていく
「目視ではわからないような小さな傷が漏水の原因になるので、生地の取り扱いは慎重になります」
GORE‑TEX® ファブリクスの保管方法はもちろん、その取り扱いにも厳格なルールがあります。一例として、製造現場の机の角は丸くしなければいけない、先端が鋭利な糸切りバサミは使ってはいけないなどです。

「裁断は何枚か重ねて行うのですが、生地がズレないよう下からエアーで吸引して固定します。普通のシャツ生地なら20枚程度重ねますが、防水生地であるGORE‑TEX® ファブリクスは吸引力が落ちるので、10枚以上は重ねないルールを設けています」

縫い直しNG。縫製よりも難しいシームシーリング

渡り廊下を抜けると、ミシンの軽快な音が響いてきました。縫製のフロアです。
皆さんすごい速さと正確性で次々と作業をこなしています。よくある工場の風景にも見えますが、GORE‑TEX® プロダクトの縫製は、一般的なシャツやジャケットとは決定的に異なる点があります。
「GORE‑TEX® ファブリクスは縫い直しができません。そこが一番難しいところです。また、裁断と同じように生地を慎重に扱わないといけません」
穴が開いてしまうと防水性能が落ちるため縫い直しはNG。さらに、縫製後は縫い目を覆うシームテープを貼る必要があり、その貼りやすさや美しさも考慮しなければいけません。縫い代に気を配り、肘の立体裁断のようなカーブした場所もシワが生まれないよう丁寧に作業する必要があるのです。
縫製よりも圧倒的に難しい工程といわれるのが、縫い目の穴に テープを貼って塞いでいく「シームシーリング」です。


縫製後、シームシーリングが施された生地
ロール状になったシームテープを上から送り、熱風を吹きかけて糊を溶かすと同時に、ローラーで圧力を与えて貼り付けます。この機械はゴア社から指定されたものを使うルールになっています。

ゴア社のロゴが入ったシーリング機
「縫い目に対してシームテープを貼る範囲も厳格に決まっています 。シーリングが多少でも蛇行すると貼代が確保できません」
防水性を確保するためには、ヒーターの温度・ローラーの圧力・ローラーのスピードも重要になっていきます。その日の温度や湿度によっても若干の変化があり、機械の個体差によっても違ってくるといいます。
「オペレーターの技量が高ければ、スピードを上げて作業を効率化させたいわけです。そうすると、温度や圧力も上げる必要があるなど条件設定には気を使います」
認定工場の誇りを胸に、丁寧に仕上げていく
毎朝作業を始めるにあたり、その日に製造する生地とシームテープを使って十字に縫い合わせたテストピースを作成し、耐水圧検査を実施します。その結果を見ながらこまめにシーリング機の条件設定をしていくのです。


シーリングした部分に水で圧力をかけ、漏水がないことを確認する
耐水圧検査は昼休憩後にも行い、しっかりと条件が出せているかを常にチェックします。
「十字に縫い合わせるのは、シーリングか重なるところほど漏水が起きやすいからです。3層のGORE‑TEX® ファブリクスは厚みがあり、シームテープの糊も厚くなるので溶けにくく難しい。一方、薄いものは糊が溶けすぎて必要以上にハミ出してしまうなど、それぞれに難しさがあります」

シーリング機の設定は正しいか、漏水はないかを確認するためのテストパーツ
GORE‑TEX® プロダクトは、縫製とシームシーリングを行ったり来たりしながら完成していきます。どうすれば厳しい条件をクリアしながら、効率的に仕上げることができるのか。その手順は長年の経験から類型化されているといいます。

工場取材時には、2025AW、9度目となったWILD THINGSとnonnativeのコラボレーション商品「WILD THINGS × nonnative EXPLORER PUFF JUMPER "DENALI" N/P TWILL GORE-TEX® 2L」の製造が進行中。メイドインジャパンのものづくりが光る。
このように、すべての工程をひとつずつ丁寧に仕上げることで完成する、GORE‑TEX® プロダクト。「GUARANTEED TO KEEP YOU DRY™」プロミスを謳う妥協なきものづくりは、きめ細やかな職人技によって生まれているのです。
最後に、GORE‑TEX® プロダクトへの思いを聞きました。
「GORE‑TEX® ファブリクスは、世界最高峰の防水透湿素材です。このような素材を、世界でも限られた認定工場として扱わせていただいていることに誇りを感じています。そのうえで、皆さんが山や街で安心して使用していただけるよう、今後も精進していきたいと思っています」
原稿:富山英三郎 写真:仁科勝介 編集:ユーフォリアファクトリー