コラム / トレイルランニング

    トレイルランニングに求められるもの 〜ランナーたちを「救う人」UTMFレスキュー長岡健一さんの証言〜

    ゲストライター
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    登山道や林道を駆け抜けるトレイルランニングは、大自然を相手にしたアウトドアスポーツ。非日常の疾走感と爽快感が味わえる反面、突然の天候の変化に体力を奪われ、思わぬトラブルに見舞われてしまうことも珍しくありません。それゆえ、ランニングと自然環境、双方に適した装備が求められます。超軽量で極めて優れた透湿性を備え、持続的な撥水性を持つ「GORE-TEX SHAKEDRY™ プロダクトテクノロジー」(以下、ゴアテックス シェイクドライ™)は、そんなトレイルランニングに最適なテクノロジー。国内では数少ない国際山岳ガイドであり、安全管理ディレクターとして国内最高峰のレース「ウルトラトレイル・マウントフジ(以下、「UTMF」)」を見守ってきた長岡健一さんも、そのメリットを感じていると言います。長岡さんが考える、トレインルランナーに必要な装備と、いちランナーとして持つべき意識とは?

    富士山周辺の約164kmもの距離を駆ける「UTMF」。
    最も多いリタイア原因は“低体温症による疲労”

    山岳ガイドや救助隊の養成にも力を入れている長岡さん。「UTMF」では安全管理ディレクターを務めており、長年に渡ってランナーたちの安全を守ってきた、その道のスペシャリストです。そんな長岡さん曰く、トレイルランニングにおいて最も多いリタイアの原因は、低体温症による疲労なのだという。

    「複合的な要因もあるので一概には言えませんが、激しい体の動きで身体の熱が上がると、深部温度を一定に保とうと大量の汗をかく、走っている間は汗も拭ききれず、外気温や風に晒されるとさらに体温が下がってしまう。それでもアスリートというのはある程度のことは我慢できてしまうのですが、無理をしすぎると低体温症になってしまうのです」

    怖いのは、そこに外的な要因が重なり急速に身体の熱が奪われてしまうことと、長岡さんは続けます。

    「人間が体温を奪われるのには、伝導・放射・蒸発・対流という4つのパターンがありますが、結論として、すべてが命に関わります。特に稜線を走っているようなシーンでは天候が悪くなくても身体が強風にさらされて放熱しますから、なるべく早い対処が必要です。熱産生ができない状態で寒さに耐えられなくなってから身体を覆っても、動き続ける(レースを続ける)ためには実はかなり遅いのです」

    「ゴアテックス シェイクドライ™」は
    “自立ランナー”への第一歩

    身体にとって「熱」はパフォーマンスを左右する、とても重要なファクター。雨がすぐに浸水してしまい放熱を促進させてしまうような装備では、身体への大きな負担へとつながってしまいます。中でも特にこだわるべきは、雨や風から身を守るレインウェア。これまで数え切れないほどのアウトドア用ウェアに触れてきた長岡さんが挙げてくれたのは、ご自身も愛用しているという「ゴアテックス シェイクドライ™」を採用したジャケット(THE NORTH FACE「ハイパーエアーGTXフーディ」)でした。

    「雨に対してとても強いというのが、選んだ最大の理由です。50年近くアウトドア業界に携わってきて、今までいろいろなウェアを着てきましたが、この生地の撥水性の高さにはちょっと未来を感じたくらいです。これを着たままスタジオで汗をかいて、そのままシャワールームで水を浴びるというテストを個人的に行ってみたのですが、内側は汗で結露することもあまりなく、そして表地から浸水することはありませんでした」

    UTMFのように一昼夜を走り続けるレースでは、予期せぬ天候の悪化は珍しくありません。「ゴアテックス シェイクドライ™」のように信頼性の高いウェアを持つことは、“自立ランナー”としての第一歩だといいます。

    「危険に満ちた自然の中で自分の極限に挑戦するのですから、なるべく人に迷惑を掛けないよう最低限必要な装備を用意することは、本来当たり前のことです。この“自立ランナー”であろうとする意識は特にヨーロッパのランナーの間では浸透しているのですが、日本にはまだまだ足りていないと感じています」

    その背景のひとつとして、ヨーロッパの大会では、難易度が高いレースほどランナーの責任が明確に示されており、大会側も「いざと言う時以外、マーシャルは何もしません。あなたを助けるのはあなた自身です」ということまで、厳しくアナウンスしているものもあります。

    「もちろん、実際は連絡があればすぐに駆けつけて最大限の対処をします。しかし、自然のなかではいつ、何があるか分かりません。最低でも数時間はその場で待機していられるような装備を持つ。そういう心構えでいてくださいね、ということなのです。『何百人、何千人が一緒に走るからなんとかなるだろう』ではダメ。ランナーとして自立すること。これが本当のスタートラインです」

    大会側が装備に定めるレギュレーションは、一般的に最低限必要な装備を規定しているにすぎません。本来であれば自分の実力に照らし合わせて、むしろ実力に不安がある人こそ高機能なウェアに頼るべき。レギュレーションと現実の差を埋めるのは、そういった自立の意識があるかどうかなのです。

    「これから参加する大会では、ぜひ“自立ランナー”を目指すことを考えてほしいと願います。特に装備の中でもレインウェアに関しては、山岳地での経験上、生と死の分岐点だと断言できる重要なものです。雨風を原因とした体温の放熱、そこからの低体温症を防ぐには何が必要か、さらにトレイルランニングでは持ち運ぶ上で軽量かつコンパクトにまとまることも求められます。そうしたことを突き詰めると、『シェイクドライ』のウェア必ず選択肢にあがるはずです。しっかりとした装備と意識を持つことで、きっとより高いパフォーマンスにつながることでしょう」

    長岡健一さん

    20代より登山を始め、谷川岳や穂高岳、剱岳などのアルパインクライミングを中心に、フリークライミング、アイスクライミング、バックカントリースキーなど様々な分野に精通。その経験を生かし、山岳救助やレスキューのプロとしても活躍する。また、数多くの山岳会や国立登山研修所の救助及び登山技術の講師としても招かれ、安全で感動のある山登りの魅力を伝えている。著書に『山のリスクに向き合うために 登山におけるリスクマネジメントの理論と実践』(東京新聞出版局)がある。

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