コラム / メンテナンス

    物を大切にするのは“当たり前”のこと。MONT-BELLが提唱する、ギアとの付き合い方

    ゲストライター
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    ひとつのアイテムをパートナーとして大切に、長く愛し続ける上で欠かせないのがリペア(修理)。各アウトドアブランドはどんなリペアサービスを展開し、そこにはどんな思いが込められているのでしょうか? 複数ブランドへの取材をもとに探っていきます。今回は、日本を代表する総合アウトドアブランドの1つ、「モンベル」のリペアサービスを取材。

    1975年の創業以来、ウェアやスリーピングバッグはもちろん、カヤックやスポーツサイクルまで幅広い商品を展開。もともとは登山家目線のものづくりからはじまったモンベルにとって、ギアを修理しながら大切に使うことはもはや“当たり前”の文化。世の中の環境意識が高まる以前から、メーカーの責任として修理サービスを展開してきました。そして、その精神は現在に受け継がれているのはもちろん、テクノロジーの進化にあわせて時代とともに変化も遂げてきたそうです。独自の取り組みについて、モンベルの歴史にも詳しいおふたりに聞きました。

     

    創業当時は社長自らが修理も。
    物を大切に使うのは“当然の責任”

    世界で愛される登山用具やアウトドアグッズの開発を目指し、1975年に大阪で創業した「モンベル」は、温暖湿潤な日本の気候に合ったスリーピングバッグやレインギアの研究開発にルーツがあります。「自分たちが、自分たちの仲間が欲しいものを作る」。どれだけニッチなものであったとしても、必要としている人がいる限り商品を届ける。だからこそモンベルのショップには、頭の先からつま先まで、アウトドアに必要なものがたくさん揃っているのです。

    「創業当時から物を作って販売をするなかで、当然、修理のニーズはありました。それに対応するのもメーカーとして当然の務め。昔は社長の辰野(現会長:辰野 勇氏)ほか、創業メンバーが直接修理をしていた時代もありましたよ」

    そう教えてくれたのは、広報部の課長 渡辺賢二さん(写真左)。

    「当時は製造の協力工場が国内にありましたので、自分たちで修理できなければ、製造している工場に持ち込んで修理をするというかたちで取り組んでいました。山のカルチャーにおいては、修理をしたり物を大切にしたりするという感覚は当たり前のことなので、昨今言われるようなSDGsやサステナビリティといったことを意識していたわけではないのです。日本では昔から何でも直して使う『お直し』の文化が根付いていますが、それと同じ感覚です」(渡辺さん)

    自分たちが欲しいものを作るということは、同時に、自分たちが作ったものに責任を持つということ。モンベルにとって“リペア”とは、「売ったあとにも長く使い続けてもらうための、メーカーとして果たすべき当然の責務」だと、生産本部 R3ディビジョン課長の角南昌輝さん(写真右)は続けます。

    「現在は工場が海外に移っていますから、わざわざ現地に送って修理をするのでは時間もコストも無駄に掛かります。そこで、国内で直せる体制を整えていく必要があるなと。そういったところから修理サービスを充実させていき、現在の修理サービスに至ります」(角南さん)

     

    全国のモンベルストアで修理受付。
    徹底したユーザー目線の修理サービス

    全国に130店舗以上ある直営店が主な窓口となり、ユーザーから修理品を受け付けているモンベルの修理サービス。石川県にあるサービスセンターや、大阪本社で専門スタッフが作業にあたっています。総合アウトドアブランドであるモンベルの多様な商品ラインナップの、なんとそのすべてが修理対象。それゆえ作業スペースにはウェア、シューズ、テントなどの様々なアイテム、さらには生地やシームテープなど数え切れないほどのパーツが修理用機材とともにずらりと並んでいます。

    「ご依頼方法としてカスタマーサービスに郵送いただくことも可能ですが、できれば直接モンベルストアにお持ち込みいただくとより安心でスムーズです。というのも、例えば自転車の転倒で破いてしまったレインウェアがあったとします。お客様としては、大きく破けている箇所をいちばん気にされると思いますが、当然、その他の部分にも小さなダメージを受けている箇所があるかもしれません。なので、修理が必要なアイテムの状態を、まずはストアのスタッフと一緒に確認していただきたいのです」(角南さん)

    使用状況を聞きながら、ダメージを受けている箇所を洗い出し、その上で“どこまで直すか”という相談もその場でできる。先述した通りモンベルの直営店は全国130店舗以上あるので、最寄りのストアで商品のことを熟知しているスタッフとコミュニケーションを取りながら修理の相談ができるのは、とても心強い。

    「あとは納期の問題も気になるところだと思います。昨今は物を大事にしようという流れもあってか、年々修理をご依頼いただく件数も増え、シーズンによっては長くお待たせしてしまうこともあります。修理工場の状況は各ストアにはオンラインで共有されていますので、『この程度なら2週間でお戻しできます』など、スタッフからその場でご説明できますし、修理後の計画も立てやすいのではと思います」(角南さん)

    現在、モンベルでは年間5万5000件ほどの修理を行っているとのこと。そのなかでも多い修理内容は、生地の破れが圧倒的だと言います。

    「ものづくりのポリシーとして、モンベルでは“Light & Fast®(軽量と迅速)”を掲げていますが、やはり軽量にしようとすると必然的に生地が薄くなり、どうしても厚いものに比べればやや破れやすくなるのはやむを得ないことです。特にGORE-TEX ファブリクスを採用した製品は過酷な環境で使われることも多いですから、やはり生地の破れというのは多い傾向にありますね」(角南さん)

    そうした修理の際にモンベルが大切にしていること。それは、「機能をどれだけ回復させられるかをしっかり評価し、ユーザーにフィードバックすること」だといいます。

    「アウトドアメーカーとして製品を自分たちの手で直す以上、いちばんに考えるのは、やはり見た目ではなく機能をいかに回復させるかということ。特にレインウェアなどでは、修理は可能でも機能性を担保できないという場合がどうしても発生します。その場合には、レインウェアとして直すことはできませんとお伝えした上で、修理をするかどうかを選択していただく、という形を取っています」(角南さん)

    アウトドアにおいて、機能は時に命を左右します。それを何より分かっているからこそ、中途半端な仕事はしない。モンベルらしい徹底したユーザー目線は、修理サービスにも色濃く反映されているのです。

     

    自分の命を守る道具だからこそ、
    物について知り、点検する習慣を

    そもそもアウトドアの道具は、自分の身を守ってくれる相棒とも言える存在。その相棒のことを、もっと観察して、もっと知って欲しい。渡辺さんは、アウトドアに親しむ人たちに訴えます。

    「アウトドアのウェアやギアの性能をしっかりと把握することは、アイテムの性能を発揮させるとともに、自らの命を守ることにもつながります。ですから、アウトドア用品は買って満足するのではなく、その物についてしっかりと把握していただきたい。また、使い終わった道具は都度点検し、不備があればメンテナンスをする。それでも難しい部分は、私たちプロに修理を任せていただく。修理サービスとは、本来そういう立ち位置であるべきだと思っています」(渡辺さん)

    アウトドアでは、道具を自分で管理することは基本中の基本。日頃のケアで道具に対する理解を深めておけばおくほど、いざフィールドでトラブルに見舞われた際にも適切に対処できる可能性が高くなるわけです。

    「GORE-TEXの製品でも、撥水性が落ちたりシームテープが剥がれてしまうのは、生地に皮脂が付いたまま放置したり使い続けたことが原因の場合がほとんど。そうならないよう、着た後は機能素材用の洗剤で洗っていただき、撥水材で仕上げていただければ、次に使うときにも良い状態で長く使うことができるでしょう。この古いストームクルーザー(下の写真)も、私が入社当初に購入した愛用品。大切にしている思い出の1着です」(角南さん)

    角南さんも自分の道具はしっかり点検し、その多くを自分で直しているとのこと。その度に「構造はこうなっているのか」と見たりするのも、また楽しいのだと言います。ただ、自分で直すためにはパーツが必要になります。そこでモンベルでは現在、購入できる修理パーツの種類を拡大中。様々なケースに対応できるよう、ファスナーの引き手やバックルなど細かなパーツも、今後インターネットを通じても購入できるようになる計画を進めているのだとか。

    「そうすることで、傷んだところをご自身で取り替えながら、愛着のあるアイテムをロングライフで使っていただくことができるようになります。そして、そういった使い方に欠かせないのが日々のケアであり、それこそが“物を大切に使う”ということだと思うんです。アウトドアに親しんでいる方はみなさん環境意識が高いですから、きっと分かっていただけるのではないでしょうか。ぜひ、今使われている道具を、長く愛用してあげてください」(角南さん)

     

    ▼モンベル「修理サービスのご案内」
    https://support.montbell.jp/common/system/information/disp.php?c=7&id=69

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